「オーディオの序章」Columbia アンサンブルステレオ Ensemble Stereo SSA-503S?の記憶

ある日の午後、ステレオが我が家にやって来た
その日まで音の出る物はテレビしかなかった。

映像が無く、音だけの世界・・・不思議な感じがした。

その個体はテレビとは違い、茶色の光沢を放ち・・・暗い室内では漆黒の輝いた。
電化製品では無く、「調度品」後で知ったがピアノ仕上げに似た塗装は高級感一杯で、手で触れても今まで知らない不思議な感触・・・初めてが押し寄せる。

「イメージ画像と良く似た感じのコロンビア製(SSA-503S ?)だったと思います、上蓋が開くタイプでプレーヤー部とチューナー部は中に格納され上から操作します」

「イメージ画像・こんな感じに開き操作します」

まだ音はしない・・・拝めと言わんばかりの威厳がある

3枚のレコードが用意され、ジャケットから出されたレコードは今まで見た事が無い「黒くて艶々光る」異形の物・・・

レコードは見た事も有るし触った事も有る。
蓄音機の時代のSPレコードが我が家には300枚程有ったが、蓄音機は遥か昔に無くなっていて、古いSPレコードが埃をかぶり・すり切れ無造作に積み上げられていて「黒くて艶々光る」物では無かった。

小さなころSPレコードが何をするものか知らず、円盤代わりに投げて遊んでいた、宙を飛び地面に落ちるときパッキンと割れる、その音と割れっぷりが楽しくて、何枚も投げて遊んでいた記憶ある・・・なんと恐ろしい遊びだ!!・・・子供だから許される・・・とんでもない事だと、少し大きくなった時気付いた・・・未だに黒歴史として記憶に残る。

家も人が住まなくなり、主人を失うと荒れていく、我が家のSPレコードも父の物で有ったけれど、当の昔に他界、価値の判る者がいなくなると、哀れで有った・・・父が知らなくて良かったと今も思う。

初めて聞いたのは
J.S バッハ トッカータとフーガ ニ短調( Toccata und Fuge in d-Moll)BWV565
(アルヒーフ盤だったと思いますが、バルヒャかリヒターか、もはや記憶に有りません)

此れには驚きました!!!・・・驚愕・愕然・・・私の音楽観(人生観かも)はこの時決まった様に感じます、人生の節々で何度も何度も、頭を過る事に成ります・・・でも曲では無いのです、この時感じた雰囲気や感触が五感に刻みこまれ、体中を駆け巡るのです。

深く・・・深く・・・吸い込まれていく様な 「深遠な世界」 時には「宇宙」・・・時には「夜の海」又は深い「森の中」だったり、一色に塗り潰された世界の様で、その先に何かが「うごめく」そんな「ざわめき」「ざわつき」「期待」「恐れ」子供では知りえなかった感覚が、なだれ込み同化した瞬間でした。

次の曲は
ビバルディ 四季 イ・ムジチ合奏団  (フェリックス・アーヨ) 1959年録音 フィリップス

バッハのドイツ・バロックとは、真逆の明るく・優美なイタリア・バロック
2枚目がこの曲で良かったと、何度も思いました・・・この曲も、その後の音楽人生を方向付け、心の支えになっていきます。

特徴的で判り易く、明るい音楽、当時この曲は十数年前に再発見されイ・ムジチ合奏団により世界に広められた曲、この合奏団が無ければ、その後クラシックを聴いていなかったかもしれません・・・再発見に感謝です。

3枚目は
シューベルト 交響曲8番「未完成」演奏者・レーベル不明
今は番号が変わり7番の表記又は併記が多いようですが、当時は8番で、8番と言えば「未完成」でした。重く暗い・・・子供が3番目に聞くには無理が有りました。

トッカータとフーガ ニ短調が余りに強烈で、シューベルトまでは持ちませんでした。
その後、シューベルトの立ち位置は微妙(嫌いな曲は少なく、好きな作曲家ですが、調性が短調な曲は少し・・・)になり、この時の「未完成」が影響を与えたのかもしれません。

この日を境に、音楽とオーディオとの付き合いが始まった・・・そうでは無く数年後に

音の印象は・・・初見の子供の私に判る筈は有りません。

その後、散発的に音楽に触れる様になり、何かしらの積み重ねが有ったはずですが、十数年後に本格的オーディオに関わり出し、この数年間で基本スタンスが出来上がり、その後の方向性が決まっていた事がわかります。

やはり音は気になると思いますので、少しだけ記憶を辿ります。

細部まで解像された音とは当然違いますが、団子とも少し違う、皆さんが想像する通りのウォームな音ですが、あの時聞いたバッハやビバルディを、後々色々の機械で再生する事に成りますが「あの時の音は一体何だったのか?」と思う事は一度も無く、最低限「音楽は奏でられていた」と思います。

10w程度の真空管アンプで、キャビネットの中は伽藍洞、左右の仕切りも無くユニットは剥き出し、セパレーションを語る以前の話、ユニットはアルニコ20cmm/5cmコーンだった様な、コーン紙は軽いはずなので、適度なボックスに入れればそれなりの音が楽しめる素材では有りましたし、当時の設計者の方達は数値以上に「音楽」を理解していた気がします。


序章の終わり・・・次はいよいよ、私的「オーディオの始まり」の話・・・PMA-300Z・・・では、また。

PMA-300Zの画像
DENON PMA-300Z ¥42,800(1973年頃)


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