「オーディオの終焉」から20年振りの再会 THIEL 「CS7」「 CS7.2」

散策の途中で一本の「のぼり」に目が留まりました。

「古書即売」

以前は古本屋さんに良く通いましたが、デジタルとBOOK OFFの時代と共に、古本の匂いも忘れていました。

何故立ち寄ったのか良く判りません「のぼり」に惹かれた感じでしょうか?

さほど関心が有る訳でもなく、ぐるりと一周、本に対し失礼かと、もう一周・・・先ほどは無かった「グリーンの厚い本」見覚えが有ります。

この頃の思い出が・・・20年振りに蘇ります。
今は過去の物となったオーディオが、ページをめくるたびタイムスリップ

これから書く事は過去の話・・・初めは「オーディオの終焉」から



「オーディオの終焉」随分大袈裟な話の様ですが、私的「オーディオの終焉」・・・
個人的にオーディオと別れを告げるターニングポイントになった年の事です。

1999年の本ですが、内容は前年の1998年発売新商品までを含む現行商品を網羅したガイドブックに成ります。

1998年に私のオーディオは終わりました。
25年続いた趣味のオーディオに引導を渡された年に成りました。

オーディオショップ開催の視聴会で1組のスピーカーを見て聞いて・・・違うと感じた時、会場で音楽を聴いてるはずの自分が、会場の上の、音のしない空間から、20人程入った会場を眺めていました・・・「幽体離脱」・・・心は此処に無かった。

CS7の画像
THIEL CS7 ¥1,600,000(2台1組)

1996年発売のスピーカーをみて感じた事は「高い」値段も物理的な高さも・・・カタログの製品紹介を見て「理論倒れ」な感じがしました。

モデルナンバーにも採用の「CS」コヒレントソース・デザインのコンセプト
時間軸特性、位相特性、周波数特性などの諸特性を厳密に整合する目的の為、ネットワークには1次(6dB/oct)を採用の記述・・・凄い事なんですか?

ネットワークの前に振動版が凄いぞ !!! どうだ感が「凄い」・・・

オール・メタルコーン・スピーカーは1976年にローディー(日立)Lo-D HS-530 (\53,000)がスチレンペーパーや樹脂をア ルミでサンドイッチした構造ではない完全メタルのウーファー(25cm口径)発売、翌年には今回の「CS7」と同じくHS630 (\75,800)で30cm口径に拡大後、20年が経っています・・・メタル素材や理論の進歩は当然有りますが、そんなに凄いですか?

ミッドハイとミッドローにはウェーブガイド(発泡スチロール)音の回折(ディフラクション)を避けた結果でしょうが、反応が早くピュアな音の為に採用したメタルコーンの前に、固有振動の巣窟(コーティング処理済でも)の障害物を置くの?・・・邪魔ですよね!
以前から、この手の手法は何度も採用されては消えていき、結局主流に成れない・・・音楽から音を求めて行かず、理論から攻めるとこの手の手法に手を出す・・・そんな感じがします。

パッシブラジエーターも量感補完の策として、それこそ大昔から採用されては、消えていき、低域を補いはするが、それ以上に輻射音や付帯音のデメリットが最後は勝ち消えていく・・・苦肉の策の代表・・・エンクロージャーのバッフルをコンクリートで固め不要振動をカットする設計が、カットしすぎて響きが無くなりパッシブラジエーターで補う堂々巡り・・・昔から何度、目にした事か・・・・

後回しにした、ネットワークには1次(6dB/oct)で位相特性、周波数特性などの諸特性を厳密に整合したとカタログ説明に書いて有りますが、ユニットとネットワークの関係は単純では有りません。

クロスオーバーを(6dB/oct)にした時、クロスさせたユニットはクロスオーバーポイントで緩やかにラップします。問題は各ユニットが理想の周波数特性で設計出来ていない(ほぼ不可能)ためピーク・ディップが発生します、歴代のスピーカー設計者が悩みに悩んだピーク・ディップが簡単に解決出来る訳は有りません。

(6dB/oct)クロスから始まり、位相反転やコストと戦い(12dB/oct)(18dB/oct)と進み高級スピーカーに成れば成るほど、コストのかかるネットワークを構築(24dB/octなど)不要な部分を急激にカットして理想の周波数特性を目指しました。時にはネットワークでの解決を諦めチャンネルディバイダーも導入してユニット事に別のパワーアンプを用意するなど、常軌を逸したお金の無駄遣いを楽しむ「オーディオ沼」にハマった方を、どれ程見た事か・・・(6dB/oct)採用は特記するほどの事では有りません・・・行きついた時、この時点ではユニットに一番ストレスを掛けない到達点だったと思います。

威張っていいのは、単発フルレンジフラット再生ユニットが出来た時と、ネットワークフリーのマルチユニットスピーカー用、各ユニットが出来た時だと思っています、耐入力・インピーダンスなど大変だと思いますが、今のアンプは大抵のインピーダンスのスピーカーは成らせるそうですから。

ネットワークに付いて最後に(6dB/oct)クロスにしたネットワークなのに部品点数多すぎです、インピーダンス補正やら・・・厳密に整合補正、また補正、せっかくの(6dB/oct)採用台無しです。

もう一点インピーダンス低すぎです、殆どショート寸前・・・スピーカー設計者として如何なものですか?・・・多くは語りませんが、この時代のアンプでは駆動出来ません。

私的「オーディオの終焉」の数ある理由の一つで最大の理由「シンプルが一番」真逆のスピーカーでした。

L250WXの画像
JBL L250 ウォルナット:¥520,000(1台、1982年発売)

「CS7」より14年程前コンセプト的に似た、時間軸特性、位相特性、周波数特性を考えラウンド&スラントバッフルとネットワーク6dB/oct採用のスピーカーを発表し、老舗オーディオメーカーが自信をもって展開したのですが、主流には成れず結局、ティール等ハイエンドオーディオメーカと言われるウエーブに乗り、一般にも注目されだした、この年代まで待つ事になりました。

技術的には20年前後前から盛んにトライ&カットされた技術やコンセプトで目新しくは無かったと思いますが、オーディオ界がこちらの方向に舵を切った時期でした・・・作られた流れは恐ろしい!!

この時代一般の人は本格オーディオから離れ、コンパクトで場所を取らないミニコンポに、そしてより小さな携帯オーディオへと移っていく流れの始まり・・・

オーディオ業界の救世主として富裕層にシフトした製品開発に・・・高額商品がより良い製品と言わんばかりに、大小取り混ぜカオスな世界になった気がします。本当に訳の分からないメーカー製スピーカが1000万を超える時代がすぐに訪れました。

当時の事を思い出して、色々書いてしまいましたが、結果音はどうだったの?良かったの?悪かったの?・・・気になりますよね、此れだけ否定的なコメントの連続・・・

普通でしたよ・・・これからのオーディオの先に有る音は・・・こんな感じなのかな?
帯域は重低音までは届きませんが低域も、やはり超広域までは届きませんが広域まで広く音場空間も前後・左右・上下と広がり新しい時代の音だと思いました。

私的「オーディオの終焉」の次の理由は、従来のオーディオが苦手としてきた静けさや・暗騒音、空間の表現に見るべき進歩を感じますが、私の一番大事にしている「音楽」を楽しむに至らない、「音」を聞いてしまうスピーカーだった事です。

表現方法が違えど「音]聞かせるスピーカーは、今まで数え切れないほど有り、消えては現れの繰り返し・・・では何故この時期だったのか?

答えは改良版「THIEL CS7 .2」が登場した1998年、最初に紹介した「YEAR BOOK 1999」に拠り・・・終焉を迎えます。

THIEL CS7.2 ¥2,680,000(2台1組)

「CS7」の音色的欠点やネットワークを改善するため、スピーカーユニット全てを自社開発に切り替え「CS7.2」が1998年に登場、理論を実践するにはユニット単体が大事な事はスピーカー設計者なら判っていた事だと思いますが、開発にあたっては各ユニットのインピーダンス・カーブのブロード化、クロスオーバー周波数付近のピーク・ディップ解消、能率と位相の切り揃えなどを行ったそうです・・・絶句!!!

「CS7」で堂々と歌い上げた全てが根底から違っていました・・・修正に掛かった経費と儲け合わせて108万円、全てを価格に上乗せしましたと言っている様に感じました。

こんな体裁だけ整え、素人が作った様なスピーカーが、ハイエンドオーディオの流れに乗じて何社も出てくると想像した時が私的「オーディオの終焉」に成りました。

私にはTHIEL 「 CS7.2」の音に¥2,680,000は出せませんし、THIELが気っ掛けになっただけで、THIEL の現在の姿も知りませんし、調べもしませんが、このオーディオ界の流れがダメでした。

最後に一言、音楽再生に絶対は有りません。
THIEL 「CS7」「 CS7.2」 の音が大好きな人がいて、情熱をもって16年頑張った人もいますし、その人が最高の音と感じていればそれでOKです。音楽再生に正解はありませんから「音楽」を楽しんで下さい。

次は、私的「オーディオの序章」の話・・・では、また会いましょう。

Columbia アンサンブルステレオ Ensemble Stereo SSA-503S

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