「こんなの邪道」JBL 4311A

Victor SX-3「オーディオスピーカー最低の音?」からSansui LM022「この鳴りっぷりと元気」へ・・・次はやはりJBLになりますよね。
オーディオに興味を持ち始めた人なら、当然の様に進む道なんですけど・・・

Sansui LM022で味わった和製アメリカンサウンド(カリフォルニアサウンド)は気持ちの良い鳴りっぷりで一つの方向性を示してくれたのですが、次のステップに躊躇が有り、どうしても受け入れたくない事や物が有るんです。

JBL 4310~4312シリーズがそれです。

4310から始まり4311-4312と続いていくJBLのロングランスピーカーなのに、随分大雑把なくくりに思われるかと思いますが、ロングランスピーカーですから、当然シリーズの中で改良が加えられ、幾つものバリエーションが存在する事は私も知っていますが・・・

初期の4310や4311のアルニコ仕様と以降のフェライト仕様では磁気回路自体も大きく変わり設計から全くの別物、4312時代にはスコーカーは当の昔にの変更され別物になっていましたが、チタンツイータに拠り、4310発売当時の視点で、サイズを超え完成されバランスに加え、エネルギッシュな音との形容で全て語れるほどだったスピーカも、時代の音へ対応し、「このシリーズなり」に当時には無かった、洗練された音へと変化していきましたが、私にはどれも一緒なんです!


何故なのか?
基本的にシンプルで単純な物に美を感じる私には。大きく目立つ白いコーンが受け入れられません。白いコーンは見た目のインパクトや美しさが有るのにどうしてなのか?

4311Aの画像

2213の画像

答えは全シリーズに採用の白いコーンです。
厳密には湿布剤ランサプラス(アクアプラス)の存在です。

ここから先は、私の思い込みと理想の話です。

ランサプラスは「逃げであり邪道」です。
設置場所や使用用途・コスト等を考えて(制約により)ペーパーコーン素材で設計し振動板を作りましたが、容積の制限で振動板のサイズが小さく、思うような低音域再生が出来ませんでした。

困りました・・・等価質量(Mo)不足で最低共振周波数(fo)が思うように下げられません。
どうしましょう・・・質量制御リングに頼ろうか?・・・うーん
もっと簡単な方法で良いじゃない!コーン自体に重さを加える・・・質量の有るものを塗って調整してしまえ・・・エーイ

foも下がり良い感じ・・・ハイ出来上がり。

こんな感じでで出来上がった様に感じています、又は初めからランサプラス使用の設計で当時の主力モニターALTEC 612A(銀箱)の音を正確に伝えると言うより、如何に心に響く音で鳴らすかに重きを置いたモニターへの挑戦と、当時アメリカで急速に増えた小規模スタジオをターゲットにした、より小さく高性能なモニターを提供していく戦略的事情だったように感じます。

では、何が私にとって受け入れられないのでしょうか?
多くの方、特に今回の場合JBLファンの方にとって、結果良い音が鳴っているのだから手法は問題ないとおもわれると思います。

そうなんです音なんです!音がダメなんです!!

下に4311Aの周波数特性図が載っています。
このパターン高低盛り上がり中凹みは、主音のみで倍音の事が考慮されていない典型的なパターン・・・小型で有りながらランサプラス湿布で63Hzピークの50Hz辺りまで再生域を伸ばし低音域の改善?を果たした様見えて50Hzより下の音が無い、高音域はピークの6.3kHzを除けば1.8kHz~14kHz辺りまでフラット、6.3kHzを除けば理想に近いのですが14kHz以降音が無い!倍音はどこ行くの?
中音域は600Hz中心のカマボコから1.25kzのピークが有り高音域へ、低中高音域のピークがJBLサウンド、両端の音なしがJBLサウンドだと思います(この結論は後に様々なスピーカーに出会い感じた事で、この当時は良く判らず、なんだか中低音域の違和感を覚えた記憶と、その後のスピーカー遍歴に繋がっていきます)

4311Aのユニット周波数特性

ランサプラス使用の是非

私のスピーカーに対する理想の話です
ランサプラスを使わない選択は無かったのか?
冒頭で書いたようにシンプルなものに美を感じます。

パルプ質量を30~40g重くしたコーン紙の一体成型では、要求を満たせなかったのか?
コーン紙一体成型で可能な限りに詰めて欲しかったと思っています、もちろん当時すでに技術的な限界に達していたと思いますし、突き詰めるより新しい技術又は新素材への関心が強かったのだと思いますが、JBL 130系ウーハーの音では要求は満たせなかったんでしょうが本当にそうでしょうか?モニタースピーカーとしては低音域の拡大は必須だったんでしょうが、コンシューマーで音楽を楽しむ場合、バランスを崩しては終わりでは・・・

当時、ステレオサウンド誌「ハイエンド・コンシューマー・ターゲット」で取り上げられ絶賛、本来のプロ用モニター用途ではなく、一般家庭での使用を目的に高い評価をされましたが・・・?ステレオサウンド誌の試聴環境や音量は一般家庭と、かなりかけ離れていたと思いますし、評論家の方も音楽を聴くと言うよりも、プロ的なモニタリング評価をし「大人の事情」も間々感じる事が有りました。

次に質量は同じで異種類の素材を組み合わせるメリットは本当に有ったのか?
ランサプラス湿布の均一性は、質量を増やしたパルプ成型品より優れていて、不要な共振など発生デメリットはなかった、又は相殺出来ていたのでしょうか?

4311Aの音を聞いた時の感想では「NO」です。
モニタースピーカーとして、低音域の確保がランサプラスに拠り確保されましたが、63Hzピークに拠り音楽の大事な部分欠けてしまいました。先ほど書いた低中高音域の3分割で帯域確保した様に感じるのですが、3か所が元気に鳴り渡り、写真で例えると強烈なコントラストを掛けた感じの疑似的なダイナミックレンジとメリハリを見ている感じと、同じ音を感じました。

スピーカーは1個のユニットで有る程度の帯域幅を任せられ、低音域程振幅が大きく一度振れると収束にも時間が掛かります。その間当然同じユニットから高音域も出ており低音域の振幅に影響され音質が変化します。それと同時に2ウエイ・3ウエイになればネットワークに拠り有る程度の分離はされていますが、隣のユニットにも音質的影響を及ぼしていき、全体の音色が変化していきます。

4311Aの音はランサプラス湿布に拠り、音質が低音域に引きずられ中低音域が曖昧になり、低音域・中音域・高音域の疑似的な明快さとは、また異なる性質の音色で単純に音楽を楽しめず、とても受け入れる事が出来ず「邪道」となりました。

最後に一つお断有りです。
この感想はスタジオでモニタリングやミキシングに使用したり、大音量でジャズなどを聞いた時の感想では有りません。一般的な日本の住宅事情で近隣に配慮した時に出せる音量での感想です。

音そのもの(汽笛や太鼓など)を聞く場合は、リアルでリニアな音量を必要としますが、
音楽を聴く場合、バランスの良い音は、音量を必要としません。

今回の 4311A は音量を必要としたスピーカーだったのかもしれません。
環境が違っていれば「ランサプラス」は正義だつたのかもしれません。

ある人の言葉
「ある種の塗装をコーン紙に施すわけだが、国内メーカーのいくつかが、試みたことがあるという話をきいている。
塗り方にもノウハウがあるため、うまくいった例はほとんどない、らしい」


製品の説明

録音スタジオや編集室、調整室などでのモニターや屋外録音用として開発されたスピーカーシステム。

低域には30cmコーン型ウーファー2213を搭載し、中域には13cmコーン型スコーカーLE5-2を搭載しています。
また、高域には3.6cmダイレクトラジエーターLE25を搭載しています。

吊下げての使用を想定し、フロントバッフルはウーファーを最上部にマウントしアッテネーターを下部に配置したレイアウトを採用しています。

外観仕上げはグレーとウォルナットの2種類のバリエーションがありました。

JBL 4311A/4311WXA ※1976年発売
4311A:¥155,000(1台、1979年頃)  ¥120,000(1台、1979年頃)
4311WXA:¥165,000(1台、1979年頃)  ¥125,000(1台、1979年頃)

方式3ウェイ・3スピーカー・バスレフ方式・ブックシェルフ型
使用ユニット低域用:30cmコーン型(2213)
中域用:13cmコーン型(LE5-2)
高域用:3.6cmコーン型(LE25)
周波数特性45Hz~15kHz ±3dB
指向性(水平・垂直)90゜
許容入力40W(RMS)
インピーダンス
クロスオーバー周波数1.5kHz、6kHz
出力音圧レベル91dB(新JIS)
エンクロージャー内容積42.5L
外形寸法幅362x高さ597x奥行298mm
重量19kg

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